第72章 老人変態VS怪物⑦

 劣勢を挽回しようと放った渾身の蹴りが効いたのか、ザイオンが後方に退いた。初めは絶対に100%勝てないと思っていたが、ひょっとしたら勝てるかもしれない、との希望が俺の頭に芽生えだしていた。


「ここまで戦えるとは、たいしたもんだ。褒めてやる。だが勝つのは、この俺様だ!」

 ザイオンは吠えると、耕作で掘り起こされた畑の周りにある砲丸ほどの石を掴み、投げつけてきた。


 俺は石を簡単に避けた。だがザイオンの狙いは、俺ではなかった。背後のドームの壁だ。石は壁を破壊し、穴が開いた。すると、強風が吹いてきた。ドーム内の空気が抜けていく風だ。


「人間という下等な生き物は、脆弱な生き物だ。酸素がないと生きていけない。この勢いだと、10分でなくなるな。さあ、どうする?」

 またザイオンが見下すような眼を向けてきた。


 そして俺の不意を突いて、襲い掛かってきた。また激しいバトルが続いた。攻撃を防ぐ一方で、俺は体内に取り込む酸素が減っていくのを感じていた。


「うっ」まずい、酸欠になりそうだ!


「どうした? さっきの勢いは?」

 ザイオンが勝ち誇った声を投げつけてきた。


「息が切れる前に、きさまを倒す」

 俺は声を絞るように出し、ザイオンに殴りかかった。だが思うように力が入らず、俺の反撃は空回りし、簡単にかわされると、腕を掴まれて地面に叩きつけられた。


「そろそろ、お遊びはおしまいだ。楽しませてもらったぞ。その礼に、おまえの首をもぎ取ってやる」

 ザイオンは舌なめずりし、獲物を仕留めたという顔をしてきた。

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