第71章 ザイオンの逆襲⑤
俺とロボット兵との距離は、100メートルを切った。このまま俺は殺されるのか? いや、そこに火星の天が味方してくれた。ロボット兵は岩石がゴロゴロと転がる崖の淵に沿って前進してきた。その崖の上が、俺の眼を射止めたのだ。リーゼントのような大きな岩がせり出していた。
俺は即座に手りゅう弾を取り出した。狙いは、リーゼントの付け根だ。高校野球時代はノーコン投手だったが、チーム1の強肩だった。その強肩が活きたことがある。試合中、あまりにもストライクが入れないので外野守備に回されたが、地方予選の試合で3塁から本塁突入の走者をレーザービームで刺したことがある。不思議と外野からだとストライクが入るのだ。
軒下までの距離はおよそ90メートル。俺は左肩の筋肉繊維が引き千切れんばかりに、全力で手りゅう弾を投げた。火星の重力を考えれば楽に届く距離だ。投げるとすぐに銃を発砲し続けた。ロボット兵の注意を逸らすためだ。
俺の狙いは落石でロボット兵を倒すことではない。人間であれば、崩れ落ちてきた岩石に逃げ遅れてお陀仏だろうが。AIのロボット兵には通じないことはよくわかっている。落石に驚いて、ロボット兵の視線がこちらから逸れれば、それで十分だ。
ドドーン! 手りゅう弾は見事に、いや標的から少し外れたが、破壊された岩石が崩れ落ちてきた。予想した通りだった。ロボット兵は落石から逃れようと発砲を一時中断し、すぐさにその場を離れた。
俺はその隙をついて、すぐさま隠れた岩場から前に飛び出し、別の岩陰に隠れた。
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