第70章 防衛戦⑰

 駆けつけるのが、少し遅かった。戦闘はもう終わっていた。とりあえずは俺たちの勝利だが、素直には喜べなかった。キアヌの部下1人、人間は35人が犠牲になった。

 36人もの、大切な仲間を失ってしまったのだ。


 次の戦いに備えて、また二手に分かれていった。フォボスに戻った俺たちを、先に到着したキアヌたちが出迎えてくれた。


「宮島さん、あなたは、いったい……いや、本当に素晴らしかった」

 キアヌが続けて言おうとした言葉を呑み、称賛してきた。


 何を言おうとしたかは、想像できた。本当は人間ではなく、本当のスパイダーマンでは? と。それはないか。まさか、得体のしれない突然変異の変態怪物とかは、思ってはいないとは思うが。いや、こっちのほうが意外と当たっているかも? 


 ま、そんなことより、のんびりと話をしている時間はない。次の襲来への準備を急いで始めた。戦力が落ちた俺たちに、勝ち目はないに等しいが、それでも絶対に、あきらめるわけにはいかない。俺たちが負ければ、火星の住民も全員が死ぬ。


「みんな、集まってくれ」

 俺は呼び掛けた。


「このフォボスには、俺が使った火星人たちの手りゅう弾が数百個ある」

 そしてその使い方について、説明を始めた。


「なるほど。宇宙の地雷原にするということですね」

 キアヌが感心したように声を返してきた。


「ああそうだ。手りゅう弾は特殊なコーティングが施されていて、奴らのレーダー網には引っ掛からないことがわかった。母艦の通り道にばら撒いて爆破させ、その間に一斉攻撃する」

 最後に語気を強くして、俺の戦法を説明した。


 成功できるか自信はないが、戦力で大きく劣る俺たちに、他に方法はない。


 これからが、防衛戦の本当の正念場だ。



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