第70章 防衛戦⑪

 ムスリたちも煙の中に飛び込んできた。俺は手りゅう弾1個を落とした。いや置き土産に転がした。派手に爆発すると、1人の脹脛付きの足が、頭上に飛んできた。


 おえ~、気持ち悪い。俺は本能的に、飛んできた足を咄嗟に避けた。ホラー映画にでも出てきそうな気味悪いシーンだ。もっともそうさせたのは俺だが。もう1人はまだ元気に生きているようで、しつこく発砲してきた。俺は最後のワイヤーを飛ばし、目先で味方の戦闘機に向けて発砲を続けている迎撃砲の背後にピタリと張り付いた。すると、予想した通り、男も発砲を中断して突進してきた。


 読みが当たった。迎撃砲を狙った味方の戦闘機の弾が、運悪く、いや運よく男の手足に当たったのだ。吹っ飛んだ男は、今度は足ではなく頭付きの上半身が手前に飛んできた。男は体が半身になりながらも、なおも襲い掛かろうとしていた。


 気持ち悪いんだよ~! てめえらホラー集団か!? と咄嗟に蹴り飛ばした。足を失い飛ぶことができなくなった、そいつは宇宙の彼方へと飛んでいった。


 やれやれ、なんとか助かった。初めて素手だけでAI野郎に勝てたことが、なんとなく誇らしかった。もっとも相手は、上半身だけの不自由な体だったが。だが勝った事実には間違いない。


 興奮冷めやらぬ顔で、改めて自分の体に眼をやった。まるで、自分の体に何者かがいるかのように思えた。いずれ、その何者かに俺自身が乗っ取られるのでは? との嫌な想像が頭に過った。



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