第70章 防衛戦⑦

 俺はハリウッドのアクションヒーローのように、甲板の上を飛び回った。そして迎撃砲を次々と破壊していった。これで5基目の破壊だ。しかし俺の動きは本当にびっくりだ。普通なら運動会のかけっこで、父母たちが気持ちに足がついていけずに転ぶように、俺の年齢のお年寄りは体が頭についていかないのが常識だが、俺の場合は逆だ。超人のような体の素早い動きに頭がついていってない。考えるよりも先に体が勝手に動いているのだ。


 気のせいなのか? 何かのスイッチが入ったような気がして、まるで体に別の脳がついていて、主である頭を支配しているかのようだ。

 そんなわけでスパイダーマンよろしく、俺が命令する前に手足が勝手に縦横無尽に艦隊を飛び回り、迎撃砲を次々と破壊していった。


「ザイオン様、誰かが外にいます。迎撃砲が破壊されています」

 表示ランプに眼をやった部下が報告してきた。


「なんだと?」

 24の瞳、いや24基の迎撃砲のうち、7基が消えていた。


「外に誰かいるのか、迎撃隊長に連絡して確かめさせろ」

 ランプに眼をやると、窓越しに見える戦況に眼を移し命令した。


「迎撃隊長から連絡が入りました。誰かが甲板で動き回っているそうです。いまから排除するとのことです」

 少し間を置いて、通信をしている部下が告げた。


「しかし、どういうことだ? 人間どもの戦闘機相手に苦戦している」

 次々と自軍機がやられていくのを目の当たりにして、ザイオンが衝撃の声を落とした。

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