第70章 防衛戦②

「ザイオン様、右舷のほうにも何か見えます。どうやら戦闘機のようです」


「何? 戦闘機だと?」

 ザイオンは眼をぎらつかせ、レーダーを睨んだ。


「破壊しますか? あ、戦闘機から画像が送られてきました」


「クレオパトラ?」


 その名は、ガイガーが当初、アマールにつけたものだった。人間の強欲な権力者たちを喜ばせるために、世界の三大美女の一人、エジプト女王の名前をつけていた。


「ザイオン様、この女を知っているのですか?」

 副官が訊いてきた。


「この女はガイガー様のスパイだ。正体は一部の幹部しか知らん」

 ザイオンは画面に眼をやったまま答えた。


「スパイ?」

「ああ人間の女と見分けがつかない姿をした凄腕のスパイだ。地球にいるはずの彼女が、なぜ火星に? 本部に連絡して確かめろ」


 命令された部下はすぐさま交信を始めた。火星から地球への交信は、光の速度でも3分ほど掛かるが、AIたちは20秒で交信できる技術を手に入れていた。

 ちなみに、NASAの火星探査機から地球に届く信号は20分もかかる。


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