第70章 防衛戦①
まさか、宇宙空間に漂うとは思ってもみなかった。しかし、周りの光景は壮大だ。平和なご時世であれば、この魅惑の光景をゆっくりと眺めていたいとの、フォボスでも抱いた感情が頭に巡っていた。だがいまは、そんな甘い感情に浸っている場合ではない。
そこにガイガーの艦隊が遠くに見えてきた。しばらくして、艦の異様な形もはっきりと見えてきた。想像していたよりも巨体な艦船だ。
「ザイオン様、レーダーに何か映っています」
部下の報告に、ザイオンは指令室の空間に現れたレーダーに眼をやった。
「拡大してみろ」
ザイオンはドスの効いた声で命令した。
「はい」
命令を受けた部下はすぐにズームアップを開始した。
「人間じゃないか。しかし、なんでこんなところに人間が漂っているんだ?」
ザイオンは少し首を傾げるような声を吐いた。
「周りに命綱が千切れたようになっています。どうやら死体のようですね。」
副官のムスリが声をあげてきた。
「なるほど、それで宇宙を漂っているというわけか」
ザイオンは見下すような眼で画像を見続けていた。
「なんだ? あの胸に抱いているものは?」
ザイオンの表情が変わった。
警戒しているような顔だ。
「さあ、人間どもが吸う酸素ボンベのようにも見えますが」
ムスリが首を傾げるような声を発してきた。
「もう少し近づいてみろ」
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