第69章 フォボスの秘密⑦
俺とアリーナは、モニターを険しい顔で見ているキアヌの傍に近づいた。まだ肉眼ではまったく見えないが、モニターにはガイガーの母艦が映っていた。
「戦闘機が出てくる母艦の出入り口は、左右に1か所ずつあるのは間違いないか?」
モニターに映る母艦を睨むように見ながら、キアヌに訊ねた。
「ええ、間違いありません。何か、考えがあるのですか?」
さすがはAIの戦闘パイロットだ。俺が何か考えていることを察したようで、キアヌが訊き返してきた。
「死んだふり作戦だ。飛行士の死体が浮遊しているように偽装して、母艦に近づく」
俺は即座に答えた。
「母艦に近づいたら、彼らにこのプレゼントをくれてやる」
俺は地底の土産を眼で指さした。
「これは?」
キアヌが背後に置いてある土産に眼をやった。
「火星人の爆弾だ。これで母艦の右の出入り口を破壊すれば、奴らは片方の出口からしか出撃できない。出口が減れば全機が出るのに時間が掛かる。その前に奴らを叩くのだ」
冬瓜のような形の爆弾の傍に立ち、計画を説明した。
長径が60センチほどもある奇妙な形の爆弾だ。地球の重力なら、とても持てるような代物ではないが、ここでは片手でもブンブン振り回せる。アリーナの話では小型核爆弾に匹敵する代物らしい。
「これができるのは俺たち人間だけだ。あんたたちだと奴らに正体がばれてしまう」
俺は声と一緒に固い決意を眼に浮かべた。
「駄目よ! 途中で撃たれるかもしれないわ」
アリーナが珍しく強い口調で反対してきた。
「確かに撃たれるかもしれないが、俺たちの敵はこいつらだけではない。次にやってくる連中に備えて、こちらの被害を最小限に抑えて勝つには、他に方法はない」
俺はモニターの母艦に眼をやった後、アリーナと目を合わせた。
彼女の俺を見る眼は、ものすごく心配そうな色をしていた。
「それなら、わたしが、援護するわ」
俺の決意が固いことを察すると、自分の計画を説明してきた。
どうやらその表情からして、俺が死ぬときは、一緒に死ぬつもりのように感じた。
「わかった」
俺は短く答えると、土産の爆弾に眼をやった。
この爆弾がいくら強力でも、出入り口に当たらなければ、何の意味もない。他の場所に当たっても、少しの被害を与えるだけにすぎない。高校時代、ノーコンエースだった俺の腕にかかっている。
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