第69章 フォボスの秘密⑤
電流が俺の全身をビリッと刺激し、脳内にも信号が流れると、火星人たちの生活、情景が両瞼に浮かんでいた。火星人たちの言語のようなので、何を話しているのかはさっぱりわからないが、人間社会とさほど変わらないように見えた。むしろ人間よりも秩序正しく生活しているように思えた。
強欲な権力者が登場するまでは、火星は平和な星だった。民主主義社会からヒトラーという悪魔を生み出したように、火星にも覇権を争う強欲な悪党たちが登場し、火星の支配をめぐって戦争が頻発するようになっていた。ただし人類と違う点は、火星を滅亡させる小惑星の落下に備えて、このフォボスを小惑星衝突回避のための基地にしていた。
「フォボスは火星の防人だ」
俺は眼を開けて起き上がると、開口一番に告げた。
「火星の防人?」
アリーナが少し驚いたような口調で訊き返してきた。
「ああそうだ」
俺は少し皮肉めいた口調で言い返した。
火星人たちは、フォボスに迎撃基地を配備し、文明を滅亡させるような巨大隕石の襲来に備えていたが皮肉にも、文明を滅亡させたのは自分たちだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます