第69章 フォボスの秘密③

 ドジって足を滑らせ、火口底まで転落するように落ちた。


「いってえ」

 俺はケツをさすった。


 落ちた場所を確認すると、浣腸の指の形の岩があった。なんで? ここにマリネリスと同じ岩があるんだよ! 俺のケツを狙って引っ越してきたのか? と不満の声を口の中に飛ばした。


「大丈夫?」

 アリーナが心配した顔で訊いてきた。いや、笑っているようにも見えた。内心はドジな男ね、と思っていたかもしれない。


「ああ、大丈夫」

 みっともないので、ケツをさするのを我慢しながら、引き寄せられるように、壁の前に立った。斜め横には、アリーナが立った。


「宮島さん、どうかしたの?」

 そのアリーナの声の他に、何かが両鼓膜を揺らした。


「この奥からだ。この奥から、俺を呼ぶ声が聞こえる」

 俺は声を返し、壁に手を触れた。


「え!?」

 手に触れた壁が扉のように開いた。


「ここはいったい?」

 俺は息を呑むように声を零し、招かれるように前に足を動かした。


「宮島さん、用心して!」

 アリーナが警戒する声を飛ばしてきた。


 俺たちは飛び道具が襲ってこないか、注意を払いながら前に進んだ。


「これは?!」

 驚いた。トンネルが少し続いた先は大きな貯蔵庫のようになっていて、見たこともない物が整然と置かれていた。


「ちょっと待って」

 アリーナが肉眼でも見えるよう、肩に装備された照明灯を天井に向けた。

 周りがパッと明るくなり、室内の全容が俺の瞳に広がった。


「いったいここは?」


 中央の高さが約15メートル、幅が40メートルほどの半円形状の弾薬庫のような施設だった。そう思ったのは、見覚えのある兵器はないが、いかにも兵器と思しきものが大量に置いてあったからだ。

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