第69章 フォボスの秘密②
火口の直径30メートルほどの円錐形のなだらかな丘のような火山だが、火口底までは100メートル近くはありそうだ。
「聞こえてくるのは、この下からだ」
火口底に眼を注いで、声を落とした。
「わたしには何も聞こえないわ」
アリーナが側に並ぶように立つと、言い返してきた。続けて何かを言いそうだったが、声には出さなかった。
おそらく、人間の耳よりも何千倍も聞き取れる自分には何も聞こえないのに、との疑念に思っているのだろう。それを言おうとしたのかもしれない。
「確かめる。下に降りてみる」
俺は火口に眼をやったまま、声を返した。
「わたしも降りるわ」
アリーナが同じように火口に眼をやったまま答えてきた。
俺たちは飛び降り心中? いや火口底を目指し、慎重に降りた。直径が2キロ余りしかないフォボスの火口に降りるのは、予想よりもたやすかった。
いや、そうではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます