第68章 ゾルダー

「ゾルダー様、全速に切り替えますか?」

 操縦をしている部下が指示を求めてきた。


 ゲバラたちよりも一足先に、アモール群小惑星帯を抜けたゾルダーの艦隊は、平常速度で進んでいた。


「いや、このままでいい。抵抗する人間どもの駆逐はザイオンの戦闘部隊だけで十分だ。我々の力は必要ない。我々の目的は火星の人間どもを金星に連れていくことだ」

 ゾルダーは命令すると、不気味に眼を光らせた。


「ゾルダー様、地球に引き返さなくて、よろしいのですか? ガイガー様が率いる軍は、大王軍とゲバラという男が率いる連合軍に大敗しました。ガイガー様の身が心配です」

 第2副官のザルーンが顔色を窺うように吐いてきた。


「心配? いったい何を心配するというのだ。ガイガー様は無敵だぞ。心配するな。変に帰ったりしたら、逆に我々が処分される。命令は絶対だ」

 ゾルダーは語気を荒げた。


「あくまで我々の目的は、火星の人間ども奴隷にして金星に連れていくことだ」

 火星の方角に眼をやりながら語気を強くした。


「地球の人間どもに代わり、火星の人間ども使うということですな」

 第1副官のフーガが横に並んで口を挟んできた。


 ゾルダーの艦隊は艦船2隻に、5千人が収容できる大型の奴隷船4隻が火星に向かっていた。


「放射線を浴びている地球の人間どもを火星で働かせたら、たった3日で死んでしまう。火星の人間どもは健康体だ。その人間どもを代わりに使わない手はない」

 指令室の空間に映し出された火星に、冷酷な眼をやった。

 

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