第65章 仮想戦⑦

 みんなの捨て石になるつもりだった俺は、自分のあまりの能力のなさに、強いショックを受けていた。ホランプの手下を簡単に片づけて彼女を助けた? ときは、自分が万能の超人に変身したつもりでいたが、大いなる思い込みだった。


 現実は、今日もコテンパンに撃ち殺されるだけの訓練になる。案の定、午前の訓練内容は予想どおりの惨敗だった。いや、少しは収穫があった。機体を撃破される寸前に、引き金をもう少しで引けそうなときが1回あったのだ。俺にしては、大変な進歩だ。


 そして失意で喉を通らないランチと、痛みつけられた体の手入れを済ませ、午後の4回目の対戦のときだった。


「アリーナ!」


 彼女が乗った戦闘機が初めて、俺の眼の前で撃破された。連戦連勝で、これまで一度も撃墜されたことはなかったのに。


 俺は、その光景に全身を凍り付かせた。これは実戦ではない、ということを俺の頭から完全に消し飛ばす、衝撃だった。


「きさまら~! 絶対に許さん!」

 怒声を飛ばし、戦闘機の引き金を引き続けた。


 俺の脳に何か怒りのスイッチでも入ったようで、襲い掛かるガイガーの戦闘機の攻撃をことごとくかわし、1機を撃破、続けて2機、3機と、敵機を次々と撃破していった。5機目を撃破したところで、俺の機も撃破された。

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