第65章 仮想戦⑥
襲来の日まで後2日。俺はアリーナとペアを組んで、訓練を続けていた。成果はだいぶ上がった、と言いたいところだが、相も変わらず殺される時間が少し伸びただけだった。全敗記録はなにも俺だけではない。人間のパイロットの5人も同じだった。ただし俺との違いは、一応交戦できるレベルまでは上達していた。この俺はというと、撃墜されまいとただ必死に逃げ回っただけだ。
そもそもAIのパイロットを相手にたった2週間で、元はご老人の俺が戦えるほど現実はそう甘くはなかったということだ。だからといって今更、やめますとは、口が裂けても言えやしない。自分の無能さを思い知らされた俺は、勝つことを諦めて,殺される時間をできるだけ引き延ばし、味方の捨て石になる腹を決めていた。
自分が捨て石になることで勝利できれば、娘の恵美を救うことになる。娘が助かりさえすれば、それで十分だ。
そして、自分が死んだ後のことも考えた。代わりに娘を守ってくれるよう、戦場に行く前にアリーナに託すつもりだった。
俺は、訓練再開の準備を始めているアリーナに眼をやった。アリーナに、いやアマールには何度も、俺は命を救われた。
彼女には感謝しても、感謝しきれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます