第65章 仮想戦④

 俺の見事な完敗、負けっぷりに、俺を見るみんなの目が点になっていた。あの実戦経験があると話していたのは、本当だったのか? という疑心の目で。


「宮島さん、地球で実戦経験があると話していましたけど」

 キアヌが遠慮がちに訊いてきた。


「ああ、あれは、ガイガーのロボットたちに追われて、逃げ回った経験だ。そのとき少しドンバチをやったのさ」

 俺は悪びれず正直に答えた。


「え? 逃げ回っただけ? すると、戦闘機で戦った経験は全然ないのですか?」

 今度はびっくりした口調で訊いてきた。


「ああ、ない」

 俺は同じ調子で応えた。


 その返答に、キアヌは改めて目を丸くし、俺の顔を見ていた。


「大丈夫だ。後10日はある」

 俺はしれっと答えた。


 だが、内心は打ちのめされていた。訓練を続けていけば勝てるようになると思っていた自信は、完全に消し飛んでいた。それでも、ここでやめるわけにはいかない。


 娘を守るという強い意思が、俺を突き動かしていた。



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