第65章 仮想戦③

 人間とヒューマノイドによる混成チームは、訓練室に入った。角が丸みを帯びた四角い白銀のボックスが50台並んでいた。これから模擬戦闘の訓練をするシミュレーターだ。中に入ると、コックピットになっていて、前に座席が一つ、後ろに二つ設置されていた。前方の座席には操縦訓練者、後ろの座席は見学者ということだ。


 それから一通りの操作方法を叩きこまれた俺は、後部座席に座り、キアヌの訓練を見学した。訓練が始まると、俺たちは宇宙空間に瞬時に飛び出した。いや実際には、この場所から1センチも動いていないが。そう錯覚するほどの臨場感だった。


 ヒューマノイド戦士のキアヌはさすがだった。この戦闘機部隊のリーダーらしく敵機の猛攻撃を巧みにかわして、敵を次々と撃墜していった。彼の部下たちも優れた腕前を披露した。問題は、人間のパイロットたちの腕だった。5人一組で敵1機と交戦したが、勝利できたのはわずか4組だけだった。これでは全滅するのは確実だ。やはりAI相手では、人間は太刀打ちできないということか? それでも過酷な訓練を続けてきた成果が徐々に表れてきた。勝利する組が増えだしてきた。


 一方の俺はというと、連戦連勝の快勝だ。と言いたいところだが。訓練を開始した瞬間に秒殺された。100戦中、100連敗だ。成果は秒殺される時間が少し伸びただけだ。


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