第65章 仮想戦②

 そこに4人の部下を引き連れたガガーリンが入ってきた。彼が人間の戦闘パイロットのリーダーだった。


「遅れて申し訳ありません。隊員全員の招集に少し時間がかかりまして」

 ガガーリンが遅れたことを謝ってきた。


 隊員たちは、隕石落下で大きな被害を受けた灌漑農業施設の復旧作業に追われていた。ある意味では、町の整備以上に大切な作業だ。だがガイガーの戦闘機に襲われたら、復興どころではない。


「別に謝らなくていい。復旧作業も大事だ」

 マルコフが手をあげ、平静な口調をつくって応じた。


「ガガーリン、これが新しい訓練内容だ。すぐに準備にかかってくれ」

 マルコフが訓練情報を空間に表示した。


「やはり、間違いないのですか? 敵が50機では、我々では太刀打ちできません」

 空間に現れた情報を眼にしたガガーリンが、素直に吐露してきた。


「確かに厳しいが、それでも住民を守れるのは、ここにいる我々だけだ。この戦いに絶対に勝たなければ、全滅することになる」

 今度は厳しい口調でマルコフが吐いてきた。


「負けると決まったわけではないわ。みんなが力を合わせれば、勝てるわ」

 アリーナが周りの重い空気を変えようとするかのように、明るい声で口を挟んできた。


「そうだ。アリーナさんの言う通りだ。みんなで勝つんだ」

 側で聞いていたキアヌも力強い口調で、隊員たちを鼓舞してきた。


「ええやりましょう。ここには我々の家族もいる。我々は必ず勝ちます!」

 ガガーリンの横にいた隊員が声を張り上げてきた。


「俺も一緒に戦う。これでも地球では実戦を経験してきた」

 周りの雰囲気に飲まれたように、俺も声をあげた。


 いや初めからそのつもりだった。火星には大切な娘がいる。俺の手で娘を絶対に守ると、腹を決めてきた。


「宮島さん、あなたは」

 マルコフが反対するような顔を向けて吐いてきた。


「まかせておけ。俺も戦闘に参加する。火星にいる全員の命がかかった戦いだ」

 マルコフの話が続く前に、俺は自分の意思を押し切った。


 それを見ていたアリーナが、何か言いたそうな顔をしていた。いったいどこで実戦経験したのか? と突っ込みでも入れそうな顔だった。


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