第65章 仮想戦①

「ガイガーの戦闘機が襲ってくるそうです」

 地球から連絡を受けた情報係が、マルコフに青ざめた顔で報告してきた。


「戦闘機が襲ってくる? 間違いないのか?」

 マルコフが凍り付いた顔で聞き返した。


「ええ間違いありません。戦闘機の数は、およそ50機だそうです」

 同じ顔のままで情報係が声を返してきた。


 本部内は異様な雰囲気に包まれた。誰もが色を失っていた。


「マルコフさん、戦闘機は火星にいつやってくる?」

 アリーナと一緒に指令室に駆けつけた俺は、即座に訊いた。


「2週間後です」

 マルコフが吐息を落とすように答えてきた。


「まさか50機で襲ってくるとは。防ぎようがありません」

 がっくりしたような顔で続けてきた。


「諦めてはダメよ。住民たち全員の命がかかっているわ」

 アリーナが横から口を挟んできた。


 もう彼女の口振りは、人間そのものだった。いや、ある面においては、人間の女性より女性らしかった。だが、普通の女性ではない。天才科学者であり、最強の女戦士であり、そして異次元の美貌の女性だ。


「もちろん諦めてはいません。ですが、50機が相手では、我々には勝ち目はない。私にできることは、住民を一人でも救うことです」

 マルコフが思いを伝えてきた。


「まだ2週間あるわ。それまでに対策をかんがえましょう」

 アリーナが落ち込むみんなを励ますように声を上げると、そこに5人の屈強そうな若い男たちが入ってきた。その中には、渓谷で救出活動をしていたキアヌもいた。


「確か、君は?」

 俺は少し驚いた声をかけた。


「はい。キアヌです」


 キアヌは渓谷で活動していたときよりも、毅然とした顔で応じてきた。

 実はこの5人こそが、火星の守り人として、ガーピスが派遣したヒューマノイドの戦闘パイロットたちだった。キアヌがそのリーダーだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る