第64章 見殺しには絶対にしない②

「ゲバラ。僕も火星に行く。母さんを助ける」

 出発の準備を進めているのを横で見ていたジュンが、腹を決めたように強い口調で声をあげてきた。


「火星に行けば、命の保証はない。おまえにもしものことがあったら、恵美さんに顔向けできない。おまえは、ここに残れ。ここが安全だ」

 ゲバラは父親のような口調で声を返した。


「いや、絶対に行く。頼む。連れていってくれ」

 決意は変わらないという顔で、ジュンがさらに語気を強くして頼んできた。


 ゲバラは準備作業を中断し、ジュンの顔をまっすぐ見た。その表情は、なにがなんでも絶対に行く、という顔をしていた。


「母が死ぬかもしれないのに、自分だけ安全な場所にいることはできない。そんなことをしたら、僕は生涯後悔することになる」

 眼を逸らさず、強い口調で気持ちを伝えてきた。


 ゲバラは瞳を宙に向け、吐息を落とした。


「わかった。そうと決まったら、急いで身支度しろ。5分後に出発する。もし遅れたら、置いていくぞ」

 ゲバラは仕方ないという口調で、渋々了承した。


「ガーピス、聞こえるか?」

 モニターに眼をやった。


「ああ、聞こえる。準備はいいか?」

 ガーピスがいつもの冷静な口調で応えてきた。


「準備はOKだ。あんたにもう一つ頼みがある」

 ゲバラもいつもの口調で返した。


「なんだ?」

「ガイガーだ。あいつは、瞬間移動できる」


「瞬間移動?」

 ガーピスが少し驚いた口調で訊き返してきた。


「ああそうだ。奴の瞬間移動に対抗できる手がないと、ガイガーには誰も勝てない。奴と戦える方法を考えておいてほしい」


 ゲバラは、恵美たちを救い出したらすぐに地球に戻り、ガイガーと決着をつけるつもりだった。自分が戻るまで、ガイガーとは直接戦わないよう、鑑真とクレージーホースには伝えてある。大事な仲間を失うわけにはいかない。



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