第64章 見殺しには絶対にしない①

「たった5人では防げない」

 ゲバラは強い口調で言い返した。


 ガーピスは火星を襲う戦闘機は多くても10機程度と予想し、5人のパイロットを派遣していた。確かに10機が相手なら5人でも倒せるだろう。だが予想が外れてしまった。戦隊なら、少なくとも50機はいるはずだ。


「幸いにも、火星にはアマールと、それに宮島さんがいます」

 ガーピスが希望を託すような口調で話してきた。


「宮島さん? 彼は人間だ」


「いえ、宮島さんは、頭以外はヒューマノイドと変らないほどに改造されています。彼の意識が目覚めれば、ヒューマノイドに近い能力を出せるはずです」


「それでも7人だ。7人では、50機は倒せない」

 ゲバラは強い口調で言い返した。


「ええ、確かに厳しいでしょうが、その7人と、襲来に備えて戦闘訓練を続けている人間のパイロットたちに託すしかありません」

 今度は曇った顔で答えてきた。


 その訓練とは、ガイガーの戦闘機の攻撃を分析し、いわゆるシミュレーターによる訓練だった。


「それで、その訓練で倒せる確率は、どのくらいだ」

 ゲバラは強い口調で訊き返した。


「10機なら100%、20機なら58%。50機だと、30%だそうだ」

 ガーピスは敬語を使うのはやめ、重たい口調で答えてきた。


「30%? それなら、勝つ見込みはほとんどないということ同じじゃないか」

 ゲバラは怒りを滲ませた口調で言い返した。


 その確率を耳にして、ゲバラの感情は怒りで高ぶった。ここで指をくわえて戦況の情報を待ってはいられない気持ちが、ますます湧いてきた。


「いま行っても戦闘には間に合わないかもしれないが、それで火星の人々が全滅しているとは限らない。生き残っている人々も、きっといるはずだ。俺は火星に行く」

 強い口調で決意を伝えた。


「わかった。ZE機を使うといい。戦闘には間に合わなくても、生存者がいれば救出にも使える」

 今度は、逆に頼んだぞという顔で応じてきた。


 ZE機とは、ガーピスが開発したばかりの超光速で飛べる大型機だった。14人も搭乗できる大型機でありながら、戦闘機を凌ぐ性能を装備していた。いずれ太陽系を離れて、他の恒星への移住も可能となる超高速機の1号機だった。


「そうと決まれば、1秒でも無駄にできない。すぐに出発する」


「わかった。1人でも多く救ってくれ」

 伝染したのか? ガーピスもゲバラと同じ口調になっていた。



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