第63章 フェニックス⑩
「ガーピス、戦闘機を貸してくれ。俺は火星に行く」
施術台から飛び降りたゲバラは、即座に頼んだ。
「ガイガーの野郎が手下を火星に向かわせた。皆殺しにするつもりだ」
ガーピスの正面に立ち、理由を話した。
「それは知っている。ガイガーの戦隊が地球を飛び出して、火星の方角に飛んで行くのをこちらもキャッチした。既に、戦隊が襲ってくることは火星にも伝えてある」
ガーピスが落ち着いた声で説明してきた。
「知らせるだけでは、火星の人々を守れない。みんな殺されるだけだ。俺が助けに行く、戦闘機を貸してくれ」
ゲバラはせかすように声を荒げた。
「いまから向かっても、もう間に合わない。戦隊に追いつくことはできない」
ガーピスが同じ口調で返してきた。
「だったら、見殺しにしろというのか?」
ゲバラは珍しく感情を露わにして、声を投げつけた。
「決して見殺しにしたりはしない。襲撃されることも予想して、防御対策を事前に打ってある」
相手がゲバラだからなのか、今度はガーピスも初めて、少し感情的な声を返してきた。
「対策?」
「ああそうだ。ガイガー軍の襲撃に備えて、火星には私と竜司さんが考案した200機の戦闘機がある」
「200機? いくら戦闘機の数が多くても、人間ではAIロボットたちには勝てない」
ゲバラは話にならないというような顔をしてきた。
「戦闘機には特殊な兵器も装備してある。普通の装備だけでは、たとえ数が100倍でも人間に勝ち目はない。そこで、地球ではまだ使用していない超パルサー砲と、素粒子砲を搭載してある」
そのゲバラの心を見透かしたように、ガーピスが説明してきた。
「超パルサー砲と素粒子砲だと?」
「ああそうだ。ガイガーの戦闘機は電磁波で攻撃されることを想定して、バリヤーを装備している。だが超パルサー砲ならバリヤーを破壊することができる。バリヤーを破壊したら、今度は素粒子砲で破壊する」
ガーピスが元の口調に戻して説明してきた。
「それに、一部の人間だけしか知らないが、火星には5人のヒューマノイドのパイロットがいる」
「ヒューマノイドが火星に?」
ゲバラは少しびっくりした顔で訊き返した。
「ああそうだ。いくら強力な兵器を装備しても人間だけでは守れない。ヒューマノイドのパイロットを密かに派遣してある。知っているのは関係者たちだけだ」
ゲバラはすぐに合点した。AIのヒューマノイドたちが火星にいることをもしも住民が知ったら、人間を守るためだと住民に説明したとしても、逆に強く反発する人たちもいるだろう。だが5人では少なすぎる、襲ってくる相手は数機ではない。戦隊だ。少なくとも50機はいるはずだ。
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