第63章 フェニックス⑧

 長かった施術が終わった。無事に成功したのか? それとも? ジュンはひどく不安の顔を浮かべて、マルケスと一緒に施術室内に駆けた。中に入ると、ガーピスが重たい顔で立っていた。その暗い表情を眼にして、ジュンの頭に嫌な予感が襲ってきた。


「思っていた以上に治療が困難でした。私がつくったヒューマノイドなら、施設にデータがあるので、再生することが簡単なのですが」

 珍しくガーピスが声を詰まらせた。


「ゲバラは、竜司さんが1人で手がけたオリジナルのヒューマノイドです。しかも人間のような脳を搭載している。しかも、その脳回路にはなぜか? ある人物の遺伝子のデータも書き込まれている」

 続けて、意味ありげな話を加えて説明してきた。


「それで、ゲバラは?」

 ジュンは声を喉から絞り出すようにして訊いた。

 ガーピスの説明に不安が増幅する一方で、がたがたと体が震えだした。


「細切れになっていた脳神経は、一応全部修復しました」

 ガーピスは一息つくと、説明を続けてきた。


「それじゃ、治ったのですね」

 不安が拭えないジュンは、縋るように訊いた。


「それが……何も反応がありません」

 今度はひどく曇った顔で答えてきた。


「ゲバラを、ゲバラを見に行ってもいいですか?」

 ジュンは、ゲバラの様子を早く見たいという顔で声を上げた。


「ええ、構いません。人間と違って、ヒューマノイドは病原菌に感染する心配もないですから」

 ガーピスがどうぞという顔で答えてきた。


 ジュンは施術室の方向、に顔を向けた。そしてすぐに向かった。だが足は鉛でも入ったかのように重かった。マルケスは一緒に行かずに、ガーピスと話を続けていた。


 その重くなった足を引きずるように、途中から駆けた。厚いドアを蹴破るように入り、施術台に横たわり数本の配線につながれたゲバラに眼を注いだ。


「ゲ、ゲバラ……」

 青ざめた顔で声をあげた。声と同様、足もガタガタと震えていた。


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