第63章 フェニックス⑤

 そこに傷を負ったマルコと西施が駆けつけてきた。二人は、鑑真の部下たちの手で救出されていた。


「ゲバラ!」

 マルコが青ざめた顔で声を上げ、マルケスの横に腰を落とした。


「ゲバラの機能は、完全に止まっている」

 マルコスは通夜のような声で告げた。


「死んでいるということですか?」

 マルコが顔を凍り付かせ、声を返した。


「人間なら確かにそうだが。俺たちは、ヒューマノイドだ。知能回路が完全に破壊されていなければ再生は可能だが、ゲバラの脳がどうなっているかだ。もし脳も破壊されていたら」

 吐息を落とすように説明した。


「ガーピスのところに急いで運びましょう。彼なら、救えるかもしれない」

 マルコが早口で提案してきた。


「ああ、救えるのはガーピスだけだ」

 マルケスは腰を上げると、鑑真たちに顔を向けた。


「鑑真さん、クレージーホースさん、俺たちはゲバラをガーピスの下に運びます」


「わかった。必ずゲバラを復活させてくれ。地球に平和が戻ったら、ゲバラと試合をしてみたい」

 クレージーホースが格闘技のポーズをしながら声を上げてきた。どうやら、周りの重い空気を和らげようとしたようだ。


「必ず治してくれ。俺とクレージーホースは、逃げたガイガーの後を追う。いまなら奴を倒せるかもしれない」

 そこに、クレージーホースに同調するように、正面に立っている鑑真が強い口調で声を上げてきた。


「鑑真さん、クレージーホースさん。ガイガーはゲバラでも倒せなかった相手です。無理だけはしないでください」

 マルケスは心配した口調で応じた。


「心配するな。倒す相手は、ガイガーだけではない。大王もいる。無理はしないさ」

 クレージーホースが心配ないという顔で答えてきた。


「マルケス、また風が吹いてきた。急いで出発しよう」

 出発の準備を終えたパイロットが無線を入れてきた。


 凪のように静かだった海が、また荒れだしていた。レイプされた自然の怒りはまだ完全には収まってはいないようだ。


「それじゃ、天気が荒れる前に出発します」

 マルケスは二人に告げると、待機している機にゲバラを運んだ。



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