第63章 フェニックス④

 ゲバラを乗せた潜水艦は海面に浮上した。海は一変していた。自然をレイプする戦闘に対し怒り狂ったかのように、あれほど荒れていた北極海の海は、寒風の音しか聞こえない元の静かな海に戻っていた。ただその景色は異様だった。無数の残骸と油が海面を汚し、青い海をゴミの海にしていた。


 鑑真の艦船が海面に浮かぶと、報せを受けたクレージーホースたちが戦闘機から降りてきた。ハッチが開き、簡易ベッドに横たわるゲバラの体が甲板に運び出された。


 そこに、マルケスの他に生き残ったゲバラの部下7人も駆け寄ってきた。


「ゲ、ゲバラ!」

 マルケスが声を上げ、ゲバラの傍に腰を落とした。


「しっかりしろ! 目を覚ませ! 眼を開けてくれ!」

 マルケスは眼を開けさせようと、声を張り上げた。


「マルケスさん、この船にはゲバラさんを再生できる道具がない。すまない」

 鑑真が曇った顔で詫びてきた。


「ガーピスの下に連れていきます。彼なら、治せるかもしれない」

 マルケスは申し訳ないという顔をしている鑑真に応えた。


「頼む。俺たちには、ゲバラが必要だ。ガイガーの奴は生き延びやがった。それに大王もいる。戦いはこれからも続く」 

 鑑真が強い口調で吐いてきた。


「兵が壊滅したいまのガイガーなら、俺たちで倒せるさ。任せておけ」

 背後からクレージーホースが口を挟んできた。


 だが、それは空元気な言葉なのは誰もがわかっていた。クレージーホースは大半の部下を失っていた。ガイガー軍を壊滅させた代償は、あまりにも大きかった。


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