第63章 フェニックス③

「鑑真、これを見てください」

 部下の趙がモニターを指さした。


 艦から300メートルほど離れた先の、深度1500メートルの地点だった。なにやら小さい棒のようなものが、画面に小さく映っていた。


「急いで、艦を近づけろ」

 鑑真がモニターを見たまま声を飛ばした。


 モニターに映っていたものが、だんだん大きく見えてきた。棒のように見えていたのは人の形だった。


「ゲバラだ! 急いで救出しろ!」

 モニターをじっと見ていた鑑真が、大きな声で命令した。


 海底へと沈んでいくゲバラの体をアームでキャッチして、艦内に収容した。


「どうだ?!」

 鑑真が心配そうな顔で、再生処置を施している部下に訊ねた。


「はい。体の損傷がひどくて、生体機能も完全に止まっています。人間なら死んでいるということです」

 曇った顔で答えてきた。


「死んでいる?」

 鑑真は訊き返すと、まったく意識のないゲバラを眼にして、体から力が抜けていく思いだった。


「はい。我々には、どうしようもありません」

 蘇生を試みている部下が告げてきた。


 鑑真はがっくりと肩を落としたまま、変わり果てたゲバラを見つめた。


「そうだ。海上にはゲバラの部下がいるはずだ。急いで海面に浮上しろ!」

 声を上げると、すぐ背後で心配そうに見ていた趙に命令した。


「人間なら心臓が止まれば、脳も死んでしまうが、俺たちはヒューマノイドだ。頭を破壊されないかぎり、きっと元に戻れる可能性はあるはずだ。ゲバラをこんな場所で死なせるわけにはいかない」

 鑑真は強い口調で、周りにいる全員に語った。


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