第63章 フェニックス①
「どうだ? ゲバラはいたか?」
鑑真が心配した口調で訊いた。
「いえ、どこを探してもいません。もう少し、探してみます」
旗艦機内を捜索している部下の1人が報告してきた。
「いや、その機はもうすぐ水圧に潰される。引き揚げろ」
部下の身を心配した鑑真は、即座に命令した。
「はい。あっ。ちょっと待ってください。コックピットウインドウが破壊されています」
「コックピットウインドウ? ゲバラは外だ! 中にはいない。外だ、間違いない。全艦に次ぐ。機が沈んでいった範囲を調べろ。絶対に見つけるんだ」
鑑真は声を飛ばした。
「現在の水深は1600メートルです。機内ならまだしも、外なら、体はもう潰れているでしょう」
モニターを見ていた副官の趙羽が声を上げた。
「いや、沈んでいく速さは、あの巨体よりも遅い。ゲバラは、あの艦よりも上の海中だ」
鑑真は探すように海中を眼にしたまま、声を返した。
鑑真たちは海中を探し続けた。彼らAIの技術なら、海面上であれば見つけ出すことはたやすいが、ここは広大な深海だ。
「くそ~。どこだ? 趙、念のため深海潜水艇も出して、さらに深い場所も捜索させろ。時間がない。急げ」
モニターの横を叩くと、艦を操縦する趙に指示した。
鑑真は、さらに深海へと潜っていく潜水艇の映像に眼をやった。海底では見つからないことを願っていた。もしそこで見つかれば、それはゲバラの死を、意味していた。
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