第62章 死闘⑤

 ゲバラは目の前の空間をハチの巣にするように銃を撃ちまくった。だが弾はガイガーの体にかすりもしなかった。逆にゲバラは連打され、蹴り飛ばされた。


「おまえにはがっかりしたぞ。予想以上に弱いな。この程度のレベルで、よくヒムラーを倒せたな」

 瞬間移動をやめたガイガーが見下すように声を飛ばしてきた。


「なるほど。あんたの強さは異次元ということか」

 殴られた顔を元に戻すように捻り、声をなげつけた。


 ゲバラは顔を殴られる直前に、衝撃を緩和できる能力を持っている。普通なら顔を粉砕されていただろう。それぐらいガイガーの拳は強烈だった。

 顔は人間同様に、ゲバラにとってもすごく大事だ。コブだらけの顔では、恵美に会えやしない。 


「しかし、俺様の拳を顔に受けて死ぬどころか減らず口がきける奴は、おまえが初めてだ。そこは褒めてやる。すぐに死んだのでは、つまらないからな」

 またライオンのような声で吠えると、ガイガーが襲い掛かってきた。


 今度は指ではなく、自動連射に切り替えて撃ちまくった。だが弾が当たったのは周りの無機質な壁ばかりだった。そして一方的に殴られ蹴られた。鋼鉄のハンマーのような拳と蹴りが、全身を痛めつけた。


「どうした? きさまの銃は俺様に当たらないぞ」

 また猛獣のような声を飛ばしてきた。


 ゲバラは、その隙を逃さなかった。声を上げたとき、ガイガーの動きが一瞬の間、瞳に映った。ガイガーの攻撃を皮一枚で回避しながら、コックピットウインドウを破壊した。バシャーン! というウインドウが割れる音が響くと、海水がドッと流入してきた。

 すると、ガイガーが驚いて攻撃の手を止めた。

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