第62章 死闘③

「ガイガー様、墜落します。脱出してください」

 第1副官のゼウスが進言してきた。


「外の奴らと侵入者どもを皆殺しにするまでは、ここに残る」

 コックピットの前に立ち、外の戦況を見ていたガイガーは怒り声を飛ばすと、指令席に座った。


 翼のない旗艦機は、谷底に落ちるように海面に落下していった。ドッドーン! 激しい衝突音と波しぶきを飛ばし、旗艦機は物凄い水柱を上げながら海中に沈んだ。がしばらくして海面に浮上した。だが海面に衝突した衝撃は凄まじく、ガイガーの部下の大半は床や壁に激しく叩きつけられて息絶えていた。


「ゼウス、生き残っている部下を引き連れて、空中にいる奴らを叩き落とせ」

 よろけながら立ち上がったガイガーは、即座に命令した。


「わかりました」

 ゼウスが部下を引き連れて出ていくのを一瞥すると、天候が急変し波しぶきを被る窓の外に眼をやった。


 数で圧倒していた自軍の戦闘機は撃ち落とされて激減し、全滅寸前になっていた。


「ガイガー様、左右の通路から敵がここに向かっています」

 モニターを見ていた部下が報告してきた。


「敵は何人だ?」

 ガイガーは平静な口調で訊き返した。


「右の通路が5人。左側は1人です」


「左は1人? ゲバラだな。おまえたち全員は、5人を始末しに行け。左の通路から来る男は、俺が相手してやる」

 ガイガーはまだ残っている8人に命令すると、にやりと不気味な笑みを浮かべた。


 8人が出ていくと、左側の通路口を、獲物を狩る眼で睨んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る