第57章 大洪水⑦

 クレーターに戻った俺とアリーナは、シートをボート10隻が作れる大きさに裁断して機に詰め込むと、今度は機材を置いてある保管庫に行った。ボートを製造する材料を調達するためだ。使える材料を詰め込むと、恵美たちがいる避難所に向かった。


「3か所とも爆破に成功したとの報告です」

 パイロットが操縦しながら、声を飛ばしてきた。


「それで、崖崩れは?」

 アリーナが心配そうに声をあげてきた。


「はい。30メートルほどの高さまで塞いでいるそうです」

 パイロットが即答してきた。


「30メートル」

 アリーナが、肩を落とすように声を落とした。せき止めに必要だと計算した高さは35メートルだった。


「宮島さん、ボートを急いで作りましょう」

 振り向くと、すぐに促してきた。


「え? ここでか? 無理だろ。狭いのに」

 俺はすぐに声を返した。


 たたでさえ、機内は材料で満杯状態だ。開いているスペースはわずかしかない。


「ええ、ここでできる分はやりましょう。時間との勝負です。少しでも早くボートを完成させたほうがいい」

 透明のモニターに設計図を広げると、作業の手順を説明してきた。


 多くの人間を救おうと、ものすごい速さで作業をこなすアリーナの姿を見ていて、俺の心に別の心も沸いていた。


 アリーナに、もしものことがあれば、俺が体を張ってでも守ると。もっとも俺たち人間とは次元の違う力を持つアリーナには、俺の出番などはないだろうが。



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