第57章 大洪水④

 俺はクレーターを出て迎えを待った。竜巻は隕石に吹き飛ばされたが、砂嵐はまだ少し続いていた。そこに待ちわびた、アリーナたちが乗った3機がやってきた。


「野口さん、後は頼む」

 見送る野口に声を飛ばすと、急いで待機している機に乗り込んだ。


 俺が搭乗すると、機は空に舞い上がった。そして上空で待機していた2機と共に渓谷を目指した。


「アリーナ、どうだ? 爆薬を仕掛ける場所は見つかったか?」

 中で待っていたアリーナに、すぐに声をかけた。


「ええ、ここよ。ここなら、洪水をせき止められるはずよ」

 透明の大きなモニターにマリネリス溪谷の図を写し、爆薬を仕掛ける地点を示した。


「ただ、洪水の量が予想以上に多ければ、完全に防ぐことはできない。大洪水にならないことを祈るしかないわ」

 アリーナが曇った顔に変えて説明してきた。


 俺はその説明に、すぐには言葉を返せなかった。グランドキャニオンの大きさなら完璧に阻止できるが、なにせマリネリスはアメリカの東海岸から西海岸まで広がる、超巨大な渓谷だ。それをたった3か所を爆破しただけで防げるものではない。


 洪水を防ぐことができなければ、娘が。それが頭に過るだけで、体がどうにかなりそうだった。


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