第56章 巨大隕石⑯

 薄い大気を切り裂いて、ミサイルが勢いよく飛び出していった。今は計算が間違いではないことを祈るしかない。5秒、4秒、3秒、2秒……。モニターの画面に、ミサイルが隕石に当たった様子が映った。だが岩の一部が剥がれただけで、まだ飛んでいた。


「ダメか?」

 マルコフが落胆の声を落とした。


 アリーナは声を返さずに、モニターをじっと見ていた。ドッコーン! という落下した衝突音が発射室にも小さく聞こえてきた。クレーターに落ちたのか? いや、クレーターから逸れて200メートルほど離れた地点に落下していた。


「やったぞ!」

 発射室で歓喜の声が上がった。


「アリーナさん、やりましたね」

 マルコフが歓声の言葉をかけてきた。


「大きな相手に正面からぶつかっても、弾かれるだけですが、縁側に当たれば軌道が少し狂います。落下地点ではその差は大きくなります」

 アリーナはホッとした顔で答えた。


「なるほど、彗星も、この方法を使えば、火星への衝突を回避できる」

 マルコフが納得の顔で声を返してきた。


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