第56章 巨大隕石⑮

 2分で岩石がミサイルのように襲ってくる。シートを盾にしたぐらいでは、住民全員の命を守れないことは、アリーナもわかっていた。アリーナは次の行動に出た。


「わたしと、代わってください」

 ミサイル発射室の席に座る男に、アリーナは声を飛ばした。


「え?」

 座っていた若い男は生返事をすると、意味が呑み込めないという顔で、席を譲った。


「アリーナさん、何をするつもりです?」

 背後にいるマルコフが訊ねてきた。


「岩石の中に鉄塊が混ざっています。シートだけでは防げません。ミサイルで完全に破壊することはできませんが、軌道なら変えることができるはずです」

 アリーナは操作を開始しながら、即座に返答した。


「え? 隕石の落下の影響で電波が乱れていて、自動で撃ち落とすのも無理です」

 席を譲った男が口を挟んできた。


「ええわかっています。わたしが手動で操作します」

 アリーナは手の動作を早めながら声を返した。


「手動で?」

 男が驚いた口調で言い返してきた。


「ええ、出来るかどうかはわかりませんが、でも、このまま何もしなければ被害者が出るのは避けられません」

 アリーナは岩石の軌道を手計算しながら早口で答えると、一呼吸を置いて発射ボタンを押した。

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