第56章 巨大隕石⑬
幸いにもシートに穴が開いたのは、その一か所だけだった。熱風地獄も徐々に納まってきた。俺は、元居た場所に戻った。
「宮島さん、あなたは、いったい?」
野口が目を丸くしたまま訊いてきた。
周りの眼も、俺に集まっていた。当然だ。いくら体を鍛えたからといって人間では絶対にありえない、超人的な動きをしたのだから。
「ああ、人間ではないと言いたいんだろう? だが俺は、れっきとした人間だ。ある事情で、首から下をAIに改造されたんだ。ただ、大事な部分は本物だぜ」
説明をすると、にやりと笑ってみせた。
周りの重くなっている雰囲気を、少しでも和らげようと思ったからだ。それと、俺への疑念も払拭する意味も含めて。
「AIに改造された?」
野口がひどく驚いた声を飛ばしてきた。
「ああそうだ。カイガーの手下に捕まって改造された。そのおかげで超人のように速く、強くなれた。もし人間の体のままなら、今頃、お陀仏になっていた」
いまは事情を説明する状況にはないので、簡単に説明した。
アマールが俺を改造させたのは、人間の足で施設から脱走するのは絶対に不可能だからだと言っていたことを思い出した。それが、ここでも威力を発揮するとは。はじめは改造されたことに怒りを覚えていたが、いまではこの体を結構、気に入っている。
「そうですか」
野口はまだ疑念が残るような顔で吐いてきた。
「心配するな。脳みそのほうは改造されていない。脳みそも改造されていたら、君たちを助けに、わざわざ火星になんかこない」
俺は同じ口調で返した。
「宮島さん、大丈夫? 何があったの?」
心配したアリーナの声が入ってきた。
「高熱で焦げたシートを破って岩が落ちてきた。大丈夫、みんな無事だ。誰も怪我をしていない」
俺はすぐに応じた。
なぜか? アリーナの言葉は女房口調から元に戻っていた。憑依していた女房が彼女の脳から離れたのか? その真相はどうなのか? まあ、どうでもいい話だが。
いまは次に襲ってくる危機に備えなければならない。破壊された大地の欠片が周りにまだ飛んでいるのだ。その欠片が、ここ直撃したら今度は犠牲者が出ないとは限らない。
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