第56章 巨大隕石①

 外縁の調査を終え、今度は氷面を調べた。ここでもレーダーに何も映らなかった。

 彼らは、ここに来なかったのだろうか? 俺の見当違いか? 眼下に広がる氷面に眼をやりながら、俺は心で呟いた。


「宮島さん、これを見てください」

 アリーナが少し興奮したような口調を飛ばしてきた。


 その声に即座に反応して、アリーナが示した画面に瞳を注いだ。画面には、大きな黒い影が映っていた。


「これは? もしかして?」

 俺は興奮した声をあげた。


「ええ、宇宙船だと思うわ」

 アリーナが即答してきた。


 俺たちの周りには、声を聞きつけた恵美やユーリーたちが、互いの体をぶつけ合うかのように集まっていた。みんな興奮したような顔だ。


「深さは約1700メートルもあるわ。ベムたちが、これを発見したとしても、機械でもないかぎり引き上げるのは無理な深さね」

 アリーナがため息のような声を落とした。


 俺は顔を上げ、氷原を見渡した。ベムたちの姿が瞼に浮かんだ。おそらく岸の前で絶望していたことだろう。

 彼らは、このどこかに眠っているはずだ。氷の中かもしれない。見つけ出して、妻と娘の下に連れていってあげたい。その思いが、ますます募った。


「わかりました」

 本部から連絡を受けたユーリーが通信を切ると、青ざめた顔を向けてきた。


「隕石が、火星に向かっているそうです」

 曇った声で説明してきた。


「隕石? まだ時間はあるだろう?」

 俺は即座に聞き返した。


「いえ、別の巨大隕石です」

 その言葉に、全員が青ざめた。



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