第55章 火星人の遺跡④

 マギは覚悟した。もう自分の体を食べさせる以外に、みんなを救う方法はない。それを察したのか、友人のリコが起き上がり、ふらつく足を引きずるようにしながら傍にやってきた。


「マギ、やめなさい。そんなことしても、いずれは、みんな死ぬわ。あなたを犠牲にして生きても、人を食べた罪悪感に苦しみながら死んでいくことになるわ」

 リコが息も絶え絶えの声で諭してきた。


「お母さん、嫌だよ! そんなことしたら、いま死んだほうがいい」

 ララが涙をボロボロ流しながら、声を上げてきた。


「いい、死ぬときは、みんな一緒よ」

 リコの言葉に、「そうよ、死ぬときは、みんな一緒よ」他の女性たちからも次々と同調する声が上がった。


「わたしたちは、誇り高き火星人よ。獣ではないわ」

 這うように傍にやってきたサラが威厳を保つように説いてきた。


「みんな、ごめんなさい。みんなに、少しでも長く生きていてほしかったの」

 マギは眼を潤ませて謝った。


「みんな、手をつなぎましょう。わたしたちは家族よ」

 年長のハナが声をかけた。


 8人は空腹をごまかそうと水を腹いっぱいに詰め込み、そして互いの手をつなぎ、横になった。それから時が流れ、つなぐ手を握る力が1人、また1人と、無くなっていた。


「お、お母さん、ずっと、一緒だよね」

 ララが息絶えそうな声で吐いてきた。


「ええ、死んでも、ずっと一緒よ」

 マギはララを抱き寄せ、最後の涙を零した。



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