第53章 火星の癌⑨
俺は車のドアを蹴破るように、車内に入った。
アリーナが全裸にされて、強姦!? そんな心配など、まったく必要なかった。
アリーナは何事もなかったように、衣服の乱れもない姿で立っていた。その足下には、ホラップが泡を吹いて気絶していた。
さっきのアリーナの悲鳴は、なんだったのか? どうやら、ホラップの手下たちを騙すための悲鳴だったようだ。やっぱり頭脳を改造されても、アリーナの戦闘力は以前と何も変わっていなかったようだ。
「宮島さん、この男は、ガイガーの命令で動いていました」
アリーナがいつもの口調で話してきた。
「ガイガーの命令?」
俺はびっくりした声で聞き返した。
「はい。この男は、ガイガーの命令で宮島さんを殺害し、衝突回避の計画を阻止しようとしたのです」
口を開けて寝ているホラップに眼をやり、同じ口調で説明してきた。
「計画を阻止できたら、その報酬として地球への帰還を認め、生き残っている人間たちの支配者にするとガイガーが約束したそうです」
「バカな? 人間を虫けらにしか見ていないガイガーが、そんな約束など守るもんか」
ホラップの醜い顔に、軽蔑の眼をやった。
「宮島さん、車が近づいて来るわ。わたしたちを追っていた車よ」
窓に眼をやったアリーナが声を飛ばしてきた。
急いで外に眼やると、5台が目前に迫っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます