第53章 火星の癌④
隕石が引き起こす巨大地震に襲われ、続いて熱暴風に吹き飛ばされ壊滅する町と、焼け焦げる人々。ぞっとする地獄の光景が、瞳に浮かんだ。
俺の想像が、空想に終わることを願った。
「マルコフか。俺だ、宮島だ。やはり全員を収容できるシェルターがどうしても必要だ。町の建設を中断して、シェルターの建造にかかってくれ。詳細は戻ってからだ」
俺はすぐに連絡を入れた。のんびりしている暇はない。
「宮島さん、誰かがわたしたちを監視しているわ」
アリーナが渓谷に眼を向けたまま告げてきた。
「俺たちを監視?」
俺は少しびっくりした顔で答えた。
「ええ、そうよ。どうやら、ただ見ているという様子ではないわ」
同じ姿勢で答えてきた。
「急いで、本部に戻りましょう」
今度は眼を合わせて答えてきた。
「わかった」
俺たちは急いで車に乗り込み、発進させた。
アリーナは運転を始めると、スピードを加速させた。道などない土砂漠のような荒野を突っ走っているので車内は上下左右、激しく揺れっぱなしだ。ちょっとでも油断をすれば横転するのは確実。下手をすれば、車が大破して、お陀仏ということもありえる。人間の俺は、天国か地獄行きだろ。アリーナは大丈夫だろうが。
「監視していた人たちが追ってきたわ。車は3台よ」
アリーナがレーダーに眼をやり、声を飛ばしてきた。
嫌な予感が、俺の脳みそに押し寄せてきた。
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