第52章 衝突回避に着手②
彗星に撃ち込む超巨大ミサイルの完成を目指し、昼夜を問わずに急ピッチで組立作業が進んだ。このミサイルに、火星の運命が、人々の命がかかっている。そして建造を始めて8か月、完成はもう間近だ。ミサイルは8機だ。その頃には、何を作っているのか住民が知ることとなった。なにせ全長600メートル、直径50メートルもある代物だ。しかも8機だ。あまりにも巨大すぎて、隠しようがなくなったからだ。東京スカイツリーが8棟もあるようなものだ。
だが、そのミサイルが何に使われるかは、まだ知られてはいない。案の定、住民の間には不安、不信感が渦巻いていた。中には、デマを飛ばす連中もいた。
「そろそろ、住民に真相を説明すべきだな」
俺は、マルコフに進言した。
「ええ、そうですね。悪質なデマを飛ばしている連中もいます。もし、ここで発射計画が遅れたら大変なことになる。集会を開きましょう」
マルコフが頷くように応じてきた。
そして1週間後、集会ドームで説明会を開いた。そのドームの隣には搬送したミサイルが1機、横たわっていた。住民の不信を払拭するため包み隠さず、実際にミサイルを見てもらうためだ。
集まった住民は約20万人以上にのぼった。もの凄い人数だ。人気バンドのコンサート会場のように集会場は人、人で埋め尽くされた。俺は眩いスポットライトを浴びた舞台でマイクを握り、歌を。ま、それは冗談だが。本当に歌ったら、しらけて石でも飛んでくるだろう。
「みなさんにこうしてお集まりいただいたのは、我々が完成させた8機の巨大ミサイルをいったい何に使うのか、それを説明するためです」
マルコフが演説を始めた。
話が進行していくうちに、目が届く範囲の住民たちの顔から、血の気が引いていくのが見えていた。会場は歓声が上がるコンサートではなく、まるで葬儀場のように重たい空気に包まれていった。
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