第50章 決死の脱出劇⑤
そこに、雑音のような声が機内に流れてきた。ガイガーの管制室からだった。この帝国の特殊な言語なので何を言っているかはわからないが、応答しなければバレてしまい攻撃されてしまう。
「何か燃やして煙を外に出せ。機が被害を受けているように、カムフラージュする」
ゲバラはすぐに指示した。
指示を受けたユーリーたち全員が、すぐさま飛行に支障がない物を燃やし、黒煙を外に流し続けた。ゲバラは機が墜落していくかのように偽装操縦をした。そして、機を森林内に着陸させた。
「みんな急いで外に出ろ!」
ゲバラは命令すると、操縦席を離れた。
そして、搭乗口に爆弾を置いて外に飛び出すと、爆弾に発砲した。ドッカーン! 機はバラバラに吹き飛んだ。これで管制室の奴らは、本当に墜落したと思うだろう。
「奴らは、確かめにくる。急いでここを離れるぞ」
みんなに指示すると、マルコスに手当てを受けた西施の傍に腰を落とした。
「ここへ来た機に戻ったら帰ったらいい。あんたは自由だ」
ゲバラは優しい口調で声をかけた。
「あなたたちは、どうするの?」
西施が聞き返してきた。
「せっかくここまで来れたんだ。俺たちは、ガイガーの首を取る」
今度は強い口調で声を返した。
「だったら、わたしも一緒に連れて行って。わたしの役目もガイガーを倒すことよ」
西施が嘆願口調で頼んできた。
西施の雰囲気からして、大王の下に1人で戻ってもろくな眼には遭わないと、ゲバラは感じ取った。ゲバラの読み取る能力は、人間とは次元が違う。ただ人間相手に、いや二人だけは、心をあえて読まないようにしている。
「わかった。だが俺たちと行動したら、命の保証はないぞ」
今度は少し厳しい口調で応じた。
「わたしは本来なら、あのとき、楊貴妃たちのように死んでいるわ」
初めて眼にしたときの、また鉄仮面の顔で吐いてきたが、いまはその質が少し変化しているように、ゲバラは感じとっていた。
「いいだろ。だが、この先は、俺の命令に従ってもらう。それが条件だ」
ゲバラは仕方ないという顔で応じた。
「ええ、もちろん。それでいいわ」
「よし、じゃあ決まりだ」
「ゲバラ、その女も連れていくのか?」
ユーリーが反対だと言う顔で声を上げてきた。
「ああ、仲間の数は増えるのは、別に悪いことではない。彼女の能力は優秀だ。戦力補強になる。それより、奴らが来る前に、ここを離れるぞ」
ゲバラは腰を上げ、みんなの顔に眼をやりながら指示した。
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