第50章 決死の脱出劇③

 擬態がばれたことで、ゲバラたちは集中砲火を浴びた。数で劣る銃撃戦は圧倒的に不利だ。電磁波パルス弾を撃ちたいが、ロボットたちが接近しないと撃っても効果はない。威力は強力だが、射程範囲が短いのだ。なら、こちらから近づくしかない。


「マルコス! 後ろの連中を頼む。俺は、前の連中を片づける」

 ゲバラは声を飛ばすと、瞬間移動のような速さで右左と動きながら、レーザー弾を発射し続けた。


 そして電磁波パルス弾の射程内に到達すると、すぐさま弾を発射した。後は、停止したロボットたちを片づけるだけだ。すると、それに気づいたロボットたちが後方に退き、距離を置いて発砲してきた。1対50。距離が離れていては、勝ち目はない。


 そこに、別の方向からレーザー弾が飛んできた。弾のターゲットは? ゲバラたちではなく、ロボットだった。撃ってきたのは第3グループの仲間たちだった。混乱に乗じて、ガイガーの輸送機を分捕ってきていた。核弾頭から逃れるために、ゲバラを命じておいたものだ。残ったロボットたちを掃討すると、逃走機はゲバラたちの前に浮いた。


「さあ! 急いで!」

 後部搭乗口から第3グループのリーダー、ニコルが声を飛ばしてきた。


「マルコス! 先に行け!」

 ゲバラは声を張り上げて命令すると、メインのコントロール室の棟に眼をやった。


 爆発が起きてから時間が経っているのに、楊貴妃たちのグループは1人も出てこない。みんな死んだのか? それを確かめに行きたい思いに駆られたが、脱出するにはもう時間がない。代わりに、撃たれて倒れている西施を抱きかかえた。


「なにをする?」 

 西施が腕から逃れようとした。


「じっとしてろ。さあ、逃げるぞ」

 ゲバラは西施を抱きかかえ、搭乗口に向かった。


「なぜ? なぜ助ける? どうせ、もうすぐ死ぬのよ」

 西施が顔に眼をやりながら、驚いた口調で訊いてきた。


「馬鹿野郎! 命をそう簡単に粗末になんかするんじゃねえ。生きている内は、命は最後まで大切にするもんだ」

 ゲバラは叱り飛ばすように声を返した。


「わたしは、あなたたちの敵よ」

 西施が理解できないという顔で吐いてきた。


「いまは、あんたは、俺たちの仲間だ。仲間を見捨てることはしない」

 ゲバラは毅然とした口調で返答すると、機内に乗り込んだ。


「核弾道が飛んできた!」

 レーダーを見ていた一番背の低い武蔵が叫んだ。


「ユリアス! 爆風の風に乗れ! 爆風を上手く利用して脱出するんだ! 全員、何かに捕まれ!」

 ゲバラは、パイロットのユリアスに声を飛ばすと、西施をマルコスに預け、副操縦席に座った。

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