第49章 ガイガー帝国⑥

 殺人レーザー網を突破したゲバラたちは、高さが200メートルはありそうな巨大な壁に囲まれた荒れ地にやってきた。そそり立つ巨大な壁を人間がよじ登るのは容易ではないが、ゲバラたちにとってたいした障害ではない。ただ、やみくもに登れば全員、ハチの巣にされるのは間違いないだろう。いくら壁の色に擬態できるとはいえ、感知される可能性はある。


「ここから、どうやって登る?」

 ゲバラは自分の考えを述べる前に、楊貴妃に訊ねた。


「あの角張っている壁から登るわ」

 ゲバラが考えていたことを楊貴妃も言ってきた。


 本来なら、一番目に付く場所だ。だが擬態できるゲバラたちにとっては好都合だ。背景の色も使うことができる。それに、万が一見つかってしまい攻撃されても、反対側に身を伏せて応戦しやすい。


 ここからは、3グループに別れて行動することを決めた。潜入するには少人数のほうがいいからだ。ゲバラが率いる第2グループは4人だ。部下のマルケスに楊貴妃の部下で、西施と虞美人という名の女たちだった。それにしても、みんな中国の歴史上の美人の名前を名乗っているとは。確かに、その名のとおり二人とも容姿端麗ではあるが、楊貴妃同様、内面も冷酷な心の持ち主たちだろう。


  ここに来る前だった。楊貴妃の部下の1人がしくじって、殺人レーザーに右足が触れてしまった。すると、右足首を切断されたその女を、楊貴妃は躊躇なく殺害した。


 ゲバラは怒り顔で卑弥呼を激しく非難したが、任務を遂行したら、どっちみち全員死ぬことになる、死ぬのが早いかの違いだけだと、楊貴妃は顔色一つ変えずに答えてきた。


 ゲバラは嫌悪感を抱いたまま壁に到着した。冷酷女の楊貴妃が、自分の部下で構成した第1グループを率いて先に登っていった。少し時間を置いて、ゲバラたちも壁を登った。それから、ゲバラの部下たちだけで構成した第3グループが続いた。


 壁の頂きが、見えてきた。


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