第49章 ガイガー帝国⑤
言い合うゲバラと楊貴妃を、双方の仲間が見ていた。
「あんたの部下は、全員、その覚悟をしているのか?」
ゲバラは眼を楊貴妃の顔に戻し、同じ口調で訊ねた。
「わたしたちは大王様のためなら、いつでも死ねる覚悟をしている。あなたたちは、ここから生きて帰るつもりだったの?」
楊貴妃が逆に訊き返してきた。
「当然だろ。最初から死ぬつもりで来たんじゃない。当然、死ぬ覚悟もあるが、最後まで最善を尽くす。それが俺たちのやり方だ」
ゲバラはみんなに聞こえるよう、はっきりとした口調で答えた。
「あなた、人間でもないのに、可笑しなことを言うわね。まるで、人間みたい」
今度は冷めた顔で、楊貴妃が応えた。
「確かに俺たちは人間ではない。だが俺たちは、新しい生命体だ。人間同様に命を大切にすることを、どこが悪いんだ?」
ゲバラは強い口調で言い返した。
すると、楊貴妃が不思議そうな顔で見ていた。
「あんたや、あんたの仲間が、もし殺されそうになったら、俺だけなく、俺の部下たちも助けようとするだろう。いまは仲間だからな」
ゲバラは熱く語った。
すると、少し間を置いて楊貴妃が下品な笑みを浮かべた。
「冗談でしょ? あなたたちが、わたしたちを助ける? ま、いいわ。逆に、あなたたちが、わたしたちの邪魔になるなら、容赦なく殺害する」
笑みを消すと、また冷淡な顔で言い放ってきた。
かみ合わない冷めた会話が終わると、ゲバラたちは気まずい雰囲気を抱えたまま森林を抜け草原にやってきた。
「止まれ!」
ゲバラは鋭い声を発した。
「なんなの?」
楊貴妃が例の調子で訊いてきた。
「あれが見えないか?」
ゲバラは声を返すと、足下に落ちている枯れ枝を前に投げた。
枯れ枝は見えない空間にぶつかると、細切れに寸断された。
「俺たちもそのまま走っていけば、ああなるところだった」
10メートルほど前方には、5メートルほどの高さまで見えない殺人レーザー網が左右延々と続いていた。人間が造ったレーザー網なら、ここにいるメンバーであれば、簡単に見破れるが、特殊な識別能力がないと見破れない代物だった。
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