第49章 ガイガー帝国⑦

 ゲバラたちは監視の目をかいくぐり、壁を乗り越えて内部に侵入した。そこは別の惑星の都市のように思えた。その異世界を構成する奇怪な建造群の中でも、ひと際大きな尖塔のような建造物が中央に高くそびえ建っていた。


 どうやら、ガイガーはそこにいるようだ。なるほど、百万はいると思われる手下を相手にして数十人で攻め入っても、ガイガーの前に辿り着く前に皆殺しにされるのが落ちだということだ。


 ゲバラは、ガイガーの兵士たちやロボットがうごめく、異様な光景を目の当たりにして納得した。ガイガーを倒すには、シールドを破壊するしかない。


 ゲバラたちは街に侵入した。それにしても巨大都市? とは思えないような活気のない異様な静けさだ。通りを行きかうのは感情のないロボットだけで、当たり前だが、人間のような会話などは一切ない。ひたすらガイガーのために働いている連中ばかりだ。彼らはAIロボットではあるが、知能域は服従するように制限されている。

 ま、一緒にいる女スパイたちも、似たようなものだろうが。


「あれか? あそこに、シールドコントロール室があるのか?」

 ゲバラは、虞美人と名乗った女に訊ねた。


「ええ、あそこよ。これまで多くの仲間の犠牲を払って、見つけた場所よ」

 虞美人が顔色一つ変えずに、答えてきた。


 犠牲者たちを気にも留めないような話しぶりに、ゲバラは閉口した。容姿は綺麗だが、中身は冷酷非情の女らしい。まったく、とんでもない女たちだ。


 ゲバラは左腕のタイマーを見た。攻撃まで残り5秒、4秒。予定の時間だ。背後の空を見上げた。ドドーン! ドドーン! またシールドに弾かれる爆発音だ。大王の戦闘機が2度目の攻撃を仕掛けてきた。今度は、総攻撃だ。



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