第46章 衝突回避計画②

 それから、林たち科学者、技術者たち全員が集まり、すぐに検討を始めた。ここからは専門家ではない知識の乏しい、俺の出番はない。代わりに、ここにいる誰よりも超高知能のある女に、アリーナに任せるだけだ。


「マルコフさん、林さん、この話は住民にはしばらくは伏せてください。もし彗星が衝突することを知ったら、大変なパニックが起きてしまう」

 俺は二人の顔に眼をやりながら、念を押すように要請した。


「ええ、もちろんわかっています。もし、衝突の情報が広がったら何が起きるか、考えるだけでもぞっとします」

 マルコフが同じ考えをしていたという顔で応じてきた。


 それから今後の方策を話し合ったが、ジョンソンと一緒に同席しているもう一人の男の眼が気になった。


 俺は長年、いろんな男たちを見てきたが、その男の眼は、悪事を働いてきた連中の眼と同じ色をしていた。火星には、そういうたぐいの人物は来られないはずだが、まさかとは思うが、不純物も紛れているのだろうか? いや、きっと俺の勘違いだろう。あまりにも異常なことが起こりすぎて、単に俺の眼が曇っているのかもしれないと、押し寄せた不安を打ち消した。


 いまは、一日も早く、計画が完成することを願うだけだ。





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