第46章 衝突回避計画①

 会議室は重い空気に包まれた。俺のルーツも喋った。


「天体観測所からは、彗星が火星に向かっているという情報も一切ない」

 火星に先住したときからリーダーをしているジョンソンという男が、懐疑的な眼をして訊いてきた。


「ジョンソンさん、ガイガーがなぜ? 火星をまったく攻撃して来なかったのかを、疑問に思ったことはあるかな?」

 見かけは同年代と思われるジョンソンに、俺は逆に訊き返した。


「それは、わからないが、火星には興味がなかったのでは?」

 ジョンソンは頭をひねるような仕草をしながら、返答してきた。


「ガイガーが火星に手を出さないのは、彗星の衝突を知っているからだ。ガイガーは太陽系最大の天体ショーを見学するつもりだ。いわば火星の人たちは、言葉は悪いが彗星衝突のモルモットなんだよ」

 俺は強い口調で言い返した。


 その言葉を耳にして、また周りは沈黙した。まるで通夜のような雰囲気になった。


「俺たちは、そんな火星に、なぜわざわざ来たのか? 別に、火星の消滅を見学しに来たのではない。みんなで協力し合えば、必ずこの危機を乗り越えられる」

 話を切り替え、みんなに熱く訴えた。


「そうだ。みんなで協力して、この危機を脱しよう」

 マルコフが周りを見渡して、言葉をつないだ。


 竜司の下で研究をしていた科学者たちも重い顔のままだったが、眼はスクリーンに映し出された計画図面をじっと見ていた。


「なるほど、非常によくできている。これなら、衝突を回避できるかもしれない」

 竜司の右腕だった、林翔平という男が希望の光を見つけたという顔で口を開いてきた。


「確かに、これなら、彗星の衝突を回避できるかもしれない」

 林に続くように、同僚のジェロニモが同じことを言ってきた。


「宮島さん、やりましょう」

 林が握手を求めてきた。


 重い雰囲気に包まれていた会議室に、少し明るさが戻ってきた。



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