第43章 小惑星③

 集団墓地と化した小惑星が視界から消えていくまで、俺は瞳を注いでいた。出発前まで探せなかった遺体は、無事に目的を達成できたら、また探しに戻るつもりだった。そして全員の遺体を、辿り着けなかった火星に埋葬してあげるつもりだ。


「宮島さん、先は長いですから、どうぞお休みください。火星に近づいたら、起こしますから」

 アリーナが眼に微笑みを添え、例の柔らかい口調で促してきた。


「そうか、悪いな。それじゃ、あとは頼む」

 俺は声を返すと、ベッドに横になった。


 あの異様な建物で目覚めて以来、安眠など一度もなかったが、ようやくゆっくりと眠れそうだ。眼を閉じると、火星に避難している娘や、竜司のことが、両瞼に大きく浮かんできた。続いて子供たちが生まれたときのこと、保育園、小学生、中学生と、子供たちとのかけがえのない思い出が走馬灯のように蘇ってきた。家族4人で過ごした幸せな日々。


 だが、息子は先に逝ってしまった。娘は何がなんでも守ってみせる。たとえ、この命を失っても。

 それから意識を失ったように眠り続けた。2度目の長い眠りだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る