第44章 火星到着①
夢を見ることもなく、深い眠りに落ちた。すると今度は、眠りの底から引き揚げられるような感覚を覚えた。
「宮島さん、起きてください」
またアマールの冷たい声、いやアリーナが優しい口調で起床を促していた。
「火星に来たのか?」
俺はその声に反応して眼を開け、半身を起こして眼をパチパチさせながら訊ねた。
「いえ、もうすぐです。まだ火星は満月ほどの大きさにしか見えませんが、接近していく様子を眼にしたいのでは? と思って予定より早く起こしました」
起こした理由を説明してきた。
なるほど、俺の気持ちをよ~くわかっている。アマールと違って、ずいぶんと気の利く女になったものだ。いい女房になれそうだ。おっと、人間ではなかったな。
俺は洗面を済ませて、操縦するアリーナの横に立った。子供の頃、憧れだった火星が、ぐんぐん目の前に近づいてくる。いや俺たちが近づいているのだ。
マリネリス渓谷、オリンポス山も見えてきた。夢にまで見た壮大な眺めだ。まさか火星を間近で見るとは。だが、俺が知っている赤い火星とはまったく違っていた。空には雲が浮き、大地には緑も少し混ざっていた。俺が知っている火星と同じなのは、地形だけだ。
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