第43章 小惑星①

 地球が米粒のようになった。ここまで来ると、もうガイガーの戦闘機に襲われる心配はない。護衛機たちが別れを告げて地球に戻っていった。これから先は、二人だけの旅路になった。


 アリーナは操縦席に座り、生真面目な顔をして一路、火星を目指していた。二人の会話と言えば、硬い話ばかりだ。アマールに冷たくあしらわれたときのことが、妙に懐かしく感じた。


「小惑星が見えてきました」

 アリーナが前を見ながら、例の口調で吐いてきた。


 コーヒーを飲んでいた俺は、その声に反応して残りを飲み干すと、彼女の隣に座った。 これが小惑星群か。いや、小惑星帯は火星と木星の間のはずだ。地球と火星の間には何もないはずだ。


 その小惑星帯に接近していくうちに合点した。どうやらどの星も小さすぎて地球からは観測されなかた星群のようだ。画面に映し出された星の数は20個ほどもあるようだが、一番大きな星でも、直径が10キロぐらいしかない。どの星も月面のようなクレーターに覆われていて、中には星同士の衝突で砕けたのか、商品にならないじゃがいものような、いびつな形をした星もあった。


「この星たちは、人間が移住を始めた頃に、AIによって発見されたものです」

 星の情報を調べたアリーナが説明してきた。

「え?」

 俺は一番大きな星を凝視した。


 その星には、宇宙船の残骸があった。いったい、何があったというのだ?


「確かめてみましょう」

 アリーナが声を返すと、船の軌道を変えて、その小惑星に近づいていった。粒のように見えていた残骸が大きく見えてきた。


 俺の胸に、不吉な予感が過った。まさかとは思うが。娘が乗った船か?

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