第38章 再生⑤
アマールが初めて、俺に優しく微笑んできた。だが、その眼差しには、悲しみも秘めているようにも思えた。死に旅立つ、別れのような眼だ。
「宮島さん、来てくれたのね。ありがとう」
これも初めての、優しい口調で吐いてきた。
「これまで一度も礼を言わなかったが、こっちこそ助けてくれて、ありがとうだよ。君が俺を助けてくれなかったら、ここにはいない。俺はとっくに死んでいただろう。本当に、ありがとう」
俺は初めて彼女に、言いそびれていた礼を述べた。
「でも、これで、お別れね」
その短い言葉がぐさりと、俺の胸に突き刺さった。
「いや、君を絶対に死なせたりはしない。ガーピスが約束した。俺のことは忘れるだろうけど、君は新しく生まれ変わる」
俺は胸に刺さった死という言葉を抜き捨てるように、すぐに声を返した。
「生まれ変わる?」
アマールが表情を変えて訊き返してきた。
「ああ、そうだ。君の思考を完全にリセットして、君は新しく生まれ変わるんだよ」
説明を加えたが、自分が言った言葉に後悔した。
つい舌足らずで口がすべってしまったが、リセットという言葉など使いたくなかった。リセットしたら、俺と彼女の関係性は本当になくなる。
ある意味、彼女が言った、お別れ、ということになるのだ。
くすぶっていた俺の心は、また重くなっていた。
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