第38章 再生②

 思考を消去するということは、再生後の彼女は、俺のことなどまったくわからなくなるということだ。それが頭に浮かぶと、言いようのない寂しさがどっと押し寄せてきた。


「彼女が再生に成功したときは、宮島さんのこともまったく知らない人ということになるでしょう」

 俺の心を見透かしたように、説明を続けてきた。


「それで彼女が生きていけるなら、そんなの問題じゃない」

 俺は条件反射のように応じた。


 だが、本心は複雑だった。アマールが死なずにすむ安堵感と同時に、俺を忘れてしまう寂しさ虚しさが、心に混在していた。


「頼む、彼女を助けてくれ」

 そんな心を封じ込めて、強く頼み込んだ。


 ガーピスはすぐには返答せず、考えているような顔をしていた。俺は祈る思いで返事を待った。5秒、10秒、15秒、返事を待っている時間が、すごく長く感じた。


 その待っている間、彼女の冷たい頃の顔がボーと頭に浮かんでいた。だがいまは全然、冷たい顔には見えなかった。いいように表現し直せば、クールビューティーかな? いや彼女は、冷たいだけの美女ではない。


 彼女との思い出が、昨日のことのように頭に浮かんできた。

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